監護者わいせつ

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先日久しぶりに傍聴へ行ったら

「監護者わいせつ」という罪の人がいた。

何のこっちゃ分からないので聴きに行ってみたら、何のことはない、

親から子へのわいせつ行為であった。

 

父親が長女に対し、長女が小学生の頃から中学生に至るまで

度々わいせつな行為をしたとして逮捕、起訴されたものであった。

要するに妻に相手にしてもらえず、しかしそれを尊重したいと考えた夫の性欲がどうにも我慢できず、妻に顔がそっくりな長女にその性的欲求をぶつけたといういきさつ。

こういう事情なので、通常なら口頭で行われる本人確認が書面上で行われていたため、私にとっては何の価値もない時間になってしまった。

妻に相手にしてもらえない、仕事のストレスもたまっていたという供述では人のせいにする他責思考の強い人だなという印象ではあるのだが、家事が苦手な妻に替わってそのほとんどを夫がやっていたというのだから、別段悪い人ではない。

そして妻の方はその上で自分が好きなバンドだか何だかを追いかけることに明け暮れ、たまには…と夫が誘ったラブホテルへ行く日にも、承諾はしたもののバンドのライブ映像を見るのに没頭してすっかり夕方になってしまい、そうすると行くには行っても夕飯の事が頭をよぎって大して発散も出来ずに帰ってきて、そうして夜になりお風呂に入り…というところで、浴室内で淫行に及んだということだった。

ことが発覚してから思いつめた夫は離婚を切り出し、自分が出ていくという形で家族関係に終止符を打った。しかしその後、警察の取り調べに対し長女が「また4人で幸せな家族にはなれないものか」と言っていたということを拘留中に聞かされたとあったから、相当に胸中複雑であろうと思う。

 

一緒に住むためには、もうやらないということと、経済的な心配がないことが大前提である。

しかし逮捕拘留されているので当然職は解かれるだろうということである程度覚悟している口調であった。前科がついているなら残念だが社会復帰は難しい。そうすると自分で何か起業をするしかないわけだが、さて、彼に何が出来るのか。

もう二度とやらないかどうか、という点においては、嫌な言い方をすれば痴漢を家の中に置いておくようなものだから誰も穏やかな気持ちではいられないだろう。証人尋問には被告人の母親が来ていたが、大変にしっかりとした口調の人で、差し出がましくなく、と言って見放すでもなく、というスタンスを各方面に取るつもりのような論調だった。

息子が加害者、孫が被害者というのはあまり多い事例ではない。憎むに憎めず、どちらかだけの肩を持つということが非常にしづらい微妙な立場だと察せられるので、その心中いかばかりかと思う。証人尋問の中で「本当は孫にプレゼントも贈ってやりたいが、それをきっかけに嫌なことを思い出させるのも申し訳ない。まだ始まったばかりの人生で、そしてこの先このことがどういう意味なのかを分かっていく過程が何よりも残酷だ」というようなことを話していたのは印象的で、確かにそうだよなぁ、と他人事ながら色々と考えさせられた。

孫娘など、可愛くて仕方ないだろうし出来ることは何でもしてあげたいと思うのが祖母の心だと思うのだがそれはもうかなわない。何をするにも一度元妻へ様子伺いをしなければならないし、そうするといちいちがストレスだろう。

自分が歳をとってきたので分かるようになったが、こういうストレスの蓄積は意外と精神的に来るもので、これが元で体調が悪くならなければ良いな…などと考えた次第である。

 

いずれにしてもまだ時間がかなりかかるようだったので休廷の時に法廷を出てから私はもう戻らなかった。この父親は非常によく事件のあらましなどを覚えていて理論的に話す人なのだが、どうしても裁判というのはいちいち「その時あなたはどう思いましたか?それはなぜですか?」というようなある種の揚げ足取りをしながら進むものだから、まどろっこしくて聞いていられないのだ。事件の内容も内容だし、あまり気が晴れるものでもないし、素直に正直に供述をしていることこそが何よりの反省の印だろうということで私はあまりそれ以上の興味を持てなかった。

何しろ生年月日が分からないのでは何も出来ない。占星術師とは無力なものである。

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